「日経ビジネス」誌(2003/8/18号)
漢方養生訓 呼吸を意識し、ストレス解消
1948年、中国で第一線の女流画家として活躍していた郭林は、子宮ガンに侵されていることを知った。40歳の時である。 その後、6回の手術により、子宮の全部と膀胱の一部を摘出したが、既にガンは全身に転移していた。回復の見込みはなかったと言う。
郭林はガンと闘った。祖父たちから手ほどきを受けていた気功を基礎にして新しい気功療法(郭林新気功)を開発した。現代医学から見捨てられた郭林は、そうして自分の命を救った。その驚異的な効果が中国全土に知れ渡り、郭林新気功のブームが起きた。75歳で生涯を閉じるまで、郭林は自らのガンに挑みながら、新気功を指導し、8,000人に教えた。
郭林新気功は歩く気功だ。特徴は風呼吸と呼ばれる呼吸法にある。「シー、シー」と鼻から息を2回吸って、「フー」と鼻から1回息を吐く。この呼吸を歩きながら意識的に繰り返す。歩く動作と組み合わせると、雑念が取り払われて、前向きの考え方が出来るようになる。
身体が病気になっても、心まで病気になってはいけないのだ。実際、前向きな明るい心でいると、免疫力が高まり、病気が治りやすくなる。
日本でも白隠禅師(1685~1768年)が内観で行う呼吸法(腹式呼吸)で、難治の病を克服した。普段私達は無意識に呼吸をしている。その呼吸を時々意識的に行ってみよう。特にストレスが強い時に意識的に行ってみると、心が安らいでくる。呼吸に意識を向けると、とらわれていた心が自由になり、難局を乗り越える勇気がわいてくる。
(堀田宗路=医学ジャーナリスト)
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