がん治療ーー心へのアプローチ⑫

    快刺激ががんを抑える③ーー「自分で治す」

心理面の効果が気功効果をさらに高める「郭林新気功」

         取材協力:伊丹仁朗(すばるクリニック院長)

              萬田靖武(郭林新気功協会代表)

         取材・文:常蔭純一(ジャーナリスト)


 「気功」というと、何やら神秘的なイメージを持つ人も少なくないのではないか。 しかし、最近では科学的な見地からも評価を高めており、病院でもさまざまな病気の治療やケアに気功が取り入れられている。 もちろん、がんもその例外ではない。 「がんに効く」気功として注目を集める郭林新気功教室を訪ねてみた。


  ** 笑顔で歩く気功法 **

 「シシフーシシフー(吸って吸って吐いて)」 (中略) この5月、東京・新宿区早稲田の早稲田奉仕園に、がんのケアに対する効果で知られる郭林新気功協会・三心会の気功教室を訪ねたときの一こまである。 ひとつ付け加えておくと、この日の教室の参加者15名、そして5名のインストラクターは全員ががん患者である。 (中略)


 ** 気功で免疫機能が向上する **

 実際にこの気功はどのように行われるのか。 (中略)

 前に挙げた伊丹医師はがん患者のケアの一環として、郭林新気功を取り入れており、東京工業大学の樋口雄三氏も何人かの研究者とともに、この気功の効果測定を行っている。 具体的には気功を始めて3~18年の中・上級者7名を対象に40分の気功の後で、ホルモンやリンパ球の値を調べている。 その結果、興奮時に分泌されるコルチゾールやアドレナリンなどのホルモンが減少し、CD4,CD8とともにNK細胞の活性度も上昇していることが確認されているのである。

 「実験結果から郭林新気功の練功には、ストレスを緩和し、自律神経の中の交感神経の働きを抑え、免疫を高める作用があると推察されます。 また、この気功には脳内の情報伝達物質であるセロトニンを高める働きもある。 気功による心身のリラックス効果とウオーキングによる運動効果が一体となって、より大きな効果がもたらされているのではないでしょうか。」と、伊丹医師は語る。


 ** 自分で治す気持ちになれることも大きな利点 **

 具体的な事例も見ておこう。 (中略)

 「気功の良いところは、受身の治療ではなく、自分でがんを抑えているという気持ちになれることでしょう。 そのことによる精神的な影響が、体の状態にも反映しているように思えてなりません。」

 もちろんがんに限らないが、結局のところ病気を治すのは患者本人だ。 医療はそのサポートを行うべき存在といって良いだろう。 そのことを考えると、「自分で治す」気功の持つ意義が、さらに重みを増すようにも感じられるのではないだろうか。